今回は、ベトナム人が1年で最も盛り上がるイベント「テト」について。日本人にはあまり馴染みのない「テト」文化。ベトナム人はテトをどう過ごしているのか?日本人のテトのおすすめの過ごし方などをご紹介いたします
テトとは?
テト(Tết「節」 )とはベトナムの旧正月です。テッグエンダン(Tết Nguyên Đán「節元旦」)の略で、中国の太陽暦に由来しており基本的には中国の春節の時期と同じです。
日本において旧正月はあまり馴染みがありませんが、中国、香港、マカオに加え台湾、韓国、ベトナム、マレーシア、インドネシア、ブルネイ、モンゴルなどの東アジア圏では国中で盛大にお祝いされ、1年で最も大切な行事になっています。
2024年のテトはいつ?
大晦日:2024年2月9日(金)
元旦:2024年2月10日(土)
となっています。ベトナムの労働法上テト期間は5日間の祝日と規定されています。しかし、実際どの日が休みになるのかは、民間企業・公的機関それぞれについて12月以降に発表されるため、その発表を待って正確に決まります。
現在のところ「2024年2月8日(木)~2月14日(水)の7連休」か「2024年2月9日(金)~2月15日(木)の7連休」の2案が検討されています。
ベトナム人はテトをどう過ごす?
ベトナムの大型連休となるテト。ベトナム人はテトをどうやって過ごしているのでしょうか?
家族や親戚と過ごす
家族の結びつきが強いベトナムでは、多くのベトナム人がテト期間中に実家へ帰省します。親戚が集まり、おせち料理を囲んで賑やかに過ごします。しかし最近では、若い世代を中心に帰省期間を短くして旅行に行くベトナム人も増えてきているそうです。
「お年玉」を渡す
ベトナムでは、年齢に関係なく「お年玉」を渡す習慣があります。ベトナム語で「お年玉」は北部では「ムントゥオイ(Mừng tuổi)」南部では「リーシー(Lì xì)」と呼ばれています。
新年に贈るお金は「幸運のお金」とされ、「贈る側と受け取る側の両方に幸運をもたらす」と考えられています。
日本では親戚の子どもたち等に配るお年玉ですが、ベトナムでは年齢に関係なく家族・親戚・お世話になっている人(部下や使用人)などに渡します。テト期間前になると、市場やスーパーなどでお年玉用の華やかな封筒を見つけることができます。
花を飾り付ける
花はテトの日にはどの家庭にも欠かせないアイテムで、幸運を象徴しています。花が美しく香りが良ければ、テトはより充実したものになると考えられています。
北部では、幸運と豊穣の象徴であるピンク色の桃の花「ホアダオ(hoa đào)」を飾ります。
南部では、発展と進歩の象徴である黄色の梅の花「ホアマイ(hoa mai)」を飾ります。中部では各地方から届けられた黄色と桃色どちらの花も飾られます。
これらの花と合わせて「黄色い菊」や「金柑の実」「黄色いユリ」を飾り付けることもあり、花を飾ることで、新年の幸運、富、繁栄、幸福への願いを表します。
おもちを食べる
ひき肉や緑豆の餡をもち米で包み、植物の葉でくるみ茹でた「おもち」が、ベトナムのお正月には欠かせないとされています。
北部では「バインチュン(Bánh Chưng)」南部では「バインテット(Bánh Tét)」と呼ばれ、南北で包む葉の種類と出来上がりの形が異なります。
北部のおもち:ドンの葉で包む・四角形
南部のおもち:バナナの葉で包む・円柱形
日本でも地方によって丸餅や角餅など餅の形が変わりますが、同じようにベトナムも地方によって違いがあるのが面白いですね。
フルーツの砂糖漬けを食べる
テトの家族団らんに欠かせないのが「ムット(Mứt)」と呼ばれるフルーツの砂糖漬け。
その種類は豊富で、それぞれの食材に意味が込められています。
ハスの実 | 子孫繫栄 |
ココナッツ | 家族団らん |
生姜 | あたたかい人生 |
ピーナッツ | 長寿 |
金柑 | 豊かな繫栄 |
専門店のほか、スーパーにも数種類盛り合わせになったムットが売られています。
テトのタブー
縁起を担ぐテトの期間中には「してはいけない」とされる行動がいくつかありますので、代表的なものを5つご紹介します。
①家の掃除やゴミ出しを避ける
テトの三が日は掃除をすると「年の初めの幸運が家から流れ出す」と言い伝えられており、掃除を控えます。
ベトナムでは日本と同様に大晦日までに大掃除を済ませて福の神を迎えるという習慣があります。
②物を壊さないようにする
一部のベトナム人は今でも、年の初めに食器が割れたり欠けたりするのは「不運」の兆しであり、家族にトラブルが発生する可能性が高いと信じています。
テトだけでなく、日常でもガラスが割れると悪いことが起きる前兆だと思われることもあるようです。
③火や水を貸してはいけない
「火は幸運を象徴し、水は常に家族に流れ込む幸運を象徴している」と考えられ、新年にこれらを他人に貸してしまうと「自分の幸運が逃げてしまう」と考えられています。
この他にも「お米」や「お金」も同様にテト期間中に貸すと財産が流れてしまうと考えられているそうです。
④口喧嘩をしてはいけない
1年の最初の日に口論すると、「1年中問題が多く、幸せになれない」と信じられています。
また「悪口や不吉な言葉」を言うことも不幸を呼び寄せると考えられており、避けられます。
家族全員が再会し、1年の幸福を願う時期として、あたたかく穏やかにテトを過ごそうと願うベトナム人の気持ちが表れていますね。
⑤不幸を避ける
喪中の人や、病人、怪我人は、訪問した人に不運を呼び込んでしまうと考えられているので、親族の家以外の訪問を控えます。
また、前年に自分の会社が倒産したなどの大きな不幸に見舞われた人も、不幸を招き入れると考えられているので、訪問は避けた方がよいと信じられています。
テト明けは転職活動が盛ん?
ベトナムではテト明け期間に転職が増えると言われています。理由としては「テト賞与を区切りとして退職する人が多い」が大きな1つの要因です。
テト賞与は日本でいうボーナスにあたり、ベトナムでは年1回テト賞与のみとする企業が多いです。
仕事への大きなモチベ―ションになっているベトナム人も少なくはありません。テト前から転職活動を進め、退職後ゆっくりと休暇を過ごしてから内定された会社へ入社する計画的なベトナム人も多いです。
また、テト期間で帰省した際に「故郷から帰りたくなくなる」「家族からのアドバイスで転職を考える」というケースもあり、日本に比べて転職に対して肯定的な国民性だと言えます。
日本人はテトをどう過ごす?
1年で最も異文化を感じられるテト期間。日本人はどのように過ごしたらよいのでしょうか?
ここからは、日本人から見たテトに関する悩みやおすすめの過ごし方についてご紹介します。
お年玉の相場はいくら?
テトで気になるのが「お年玉」の相場。
会社の場合、ベトナムでは年間の給与額が「13か月分」とされていて、13か月目の給与はテト前の賞与となっていることが多いです。
この賞与がある意味お年玉の役割をしていますので、基本的には会社としてお年玉を配る必要はありません。
従業員が多い場合、個人では一切配らないことにしている会社も多いです。
ベトナム人は寛容な人が多いことから、お年玉が無かったからといって責めるようなことはありません。また縁起物のため金額は気持ちと考えられているため、普段の関係を考慮して金額を決めるとよいでしょう。
知り合いの子ども | 5万VND~ |
両親・祖父母 | 100万VND~ |
会社の部下 | 10万VND~ |
ドライバー | 50万VND~ |
シッター | 50万VND~ |
お年玉用の封筒に入れて渡すようにしましょう。5万VND札や20万VND札は赤色で縁起がいいとされており喜ばれます。一方で、不吉とされる「4」の数字や古いお札は避けるのが無難です。
渡すタイミングは新年明けてから10日以内が目安ですが、日本人は不在の場合などもあり、テト前に渡すこともあります。
ベトナム人へテトの贈り物は?
「お金を贈るのにどうしても抵抗がある」という場合には、テトに適したギフトセットを用意するとよいでしょう。
毎年テト前になると豪華に飾り付けられたギフトセットが店頭に並びます。
定番は「お菓子の詰め合わせ」「赤ワイン」「ティーセット」「ムットのセット」です。見栄えが良く赤や金色などの華やかさがあるものが好まれます。
テト期間に気を付けることは?
ほとんどのお店が閉まる
街中の多くの「カフェ」や「レストラン」が休業します。大型スーパーなども営業時間を短縮するなどするため注意が必要です。
事前にFacebook等で営業状況を確認するようにしましょう。
交通機関の渋滞・値上げ
テト期間中は帰省や旅行の需要が拡大するので、ホテルなどの宿泊施設や電車、遠距離バス、飛行機などの公共交通機関の料金が一斉に値上がりします。
例えば、昨年のテト期間中は配車サービスアプリの「Grab」で1回の利用当たり5,000VND~15,000VNDの追加料金が適用されました。
また、観光移動手段に有効なタクシーやツアーガイドも少なくなり、帰省や旅行に行く人々による交通渋滞も発生するので早めの計画的行動が大切です。
ATMが現金不足になることも
テト期間中は基本的に銀行が休みになるため、ATMに人が殺到します。現金が補給されない期間が続くため、ATMによっては「現金が入っていない」ということもあります。
テト前に必要な現金は事前に用意しておくとよいでしょう。
テトのおすすめの過ごし方
ベトナム国内で過ごす
テト期間は街中が華やかに飾り付けられ、人々からも新年の楽しい雰囲気を感じ取ることができます。
年越しには音楽フェスティバルが開催されたり花火が打ち上げられたりと、普段とは違ったベトナムを体験することができるでしょう。
また「ダラット」や「バリアブンタウ」などベトナム国内のリゾート地で過ごすのも人気です。
混雑や通常と異なる営業時間が予想されるため、国内旅行は余裕を持って計画しておくと安心です。
帰国・海外旅行をする
テト期間を利用して、日本へ一時帰国する人も。
日本のお正月シーズンと重ならないこともあり、ゆっくりと過ごすことができそうです。
ベトナム周辺の国へ海外旅行するのもおすすめです。
「タイ」や「フィリピン」は旧正月の文化が薄く、比較的混雑を避けることができます。
一週間程度と長く休みが取れるため普段行きづらい遠い国へ旅行することも可能です。
まとめ
ベトナム語で「明けましておめでとう」は「Chúc mừng năm mới(チュックムンナンモイ)」と言います。
テトは家族や親戚で新年の幸福や健康を祈り、1年で最も賑やかな時期です。機会があれば、テトをベトナムで過ごしてみてはいかがでしょうか?