ベトナムは近年、急速な経済成長を遂げ、特に輸出産業がその成長を牽引しています。
地理的条件の優位性、労働コストの低さ、政府の支援政策など、さまざまな要因が結びつき、ベトナムは国際的な貿易の中心地としての地位を確立しつつあります。
こちらの記事では、ベトナムの輸出産業の現状の強みや課題と将来の成長可能性について公開します!
ベトナムの主要な輸出産業
①繊維・アパレル産業
繊維・アパレル産業は、ベトナムの主要な輸出品目の一つです。豊富な労働力と比較的低コストな生産体制により、アメリカやヨーロッパ諸国への輸出が拡大しています。
NikeやAdidasなどのスポーツブランド、アウトドアブランドThe North Face、Calvin KleinやTommy Hilfigerなどのハイブランドなど様々な有名アパレルブランドがベトナムに製造拠点を置いています。
ベトナムの縫製工場が持つ高い技術力と品質管理の徹底が人気の秘訣となっています。
輸出国の中でも特に、アメリカ合衆国との二国間貿易協定(TPPなど)により、ベトナムは関税の削減といった恩恵を受け、より多くの製品を輸出できるようになりました。
②エレクトロニクス(電子機器や電子製品等)
エレクトロニクス産業は、特にスマートフォンや家電の生産において急成長しています。
2023年の輸出額は573億2,500万ドルと、輸出品目の中でもトップです。
サムスンやLGといった大手韓国企業がベトナムに生産拠点を設置したことにより、ベトナムは電子機器の一大生産地となり、アメリカ、ヨーロッパ、日本など多様な市場に輸出が増加しています。
韓国企業のベトナム進出は非常に進んでおり、現在ベトナム在住韓国人は10万人以上とベトナム在住日本人の5倍を超えています。
③農業製品
ベトナムは米の輸出でも有名で、タイに次いで世界有数の米輸出国です。2024年の夏に起きた日本の米不足の際には、ベトナムのお米を販売している店舗もありました。
また、コーヒーやカシューナッツ、胡椒などの農産物も主要な輸出品であり、特にコーヒーはブラジルに次ぐ世界第2位の生産国です。
こうした農業製品は、アメリカやヨーロッパ、中国などの大市場に輸出されています。
④水産業
ベトナムは国の東側全てが海に面しており、非常に長い海岸線を持つため、漁業・水産業が盛んな国でもあります。
エビや白身魚(バサ、トラなど)の養殖が特に盛んであり、米国や日本、欧州向けに大量に輸出されています。
日本人の食卓には欠かせない海産物はベトナムによって支えられているのです◎
水産業は、ベトナムの輸出収入の大きな柱であり、国内の農村部の雇用を支える重要な産業です。
しかし、国際的な基準を満たすための品質管理や持続可能な養殖方法の導入が課題とされています。
参考文献:JETRO
ベトナムの輸出産業成長の背景
ベトナムは近年急激な輸出産業の成長が見られますが、それには様々な背景があります。
こちらではその理由について、紹介していきます◎
a. 労働コストの低さと人口構成
ベトナムの労働力は非常に安価で、かつ若い世代が多いことから、多国籍企業が製造拠点としてベトナムを選択する大きな要因となっています。
現在のベトナムは平均年齢31歳、人口ピラミッドは25歳~40歳の割合が多いつぼ型になっており、実際にベトナムで働いてみると労働力の若さに驚きます。
また、中国の人件費が上昇したことで、多くの企業が生産コスト削減のためにベトナムへ移転してきました。このことが、電子機器やアパレル産業の急成長に繋がっています。
b. 貿易協定の拡大
ベトナム政府は多国間・二国間の貿易協定の締結に積極的であり、これが輸出産業の拡大を後押ししています。
特に2020年にEUとの自由貿易協定(EVFTA)、2019年の環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)への参加が、近年のベトナムの輸出市場の拡大に大きく影響を与えています。
これにより、関税が削減されたことで、輸出製品がより競争力を持つようになりました。
c. 政府の産業振興政策
ベトナム政府は工業化と近代化を推進する政策を掲げ、製造業の発展を強く支援しています。
例えば、一定の基準を満たす外資企業には、法人税の減免や税率の優遇措置を適用しています。特に、IT産業やハイテク産業などの分野では優遇措置が拡大されています。
ベトナム政府は、これまでの労働集約型産業からハイテク産業への転換を目指しており、ハノイやホーチミン市周辺では、ハイテク工業団地が整備され、ITや電子機器、医療機器などの企業が集まっています。
また、工業団地や経済特区の整備、物流インフラの改善を通じて、外資企業が拠点を築きやすい環境を提供しています。
主要都市周辺では、物流の効率化や輸送コストの削減が進められています。
d. 地理的利点
ベトナムは世界最大の製造業拠点である中国と国境を接しており、原料や部品の輸入が容易に行われます。
また、東南アジアの中心でありアジア太平洋地域の主要貿易ルートに隣接しているため、貿易の利便性がとても高いのが特徴です。
これにより、東南アジア地域全体やその他のアジア市場に向けた輸出が容易となり、効率的な輸出体制が整っています。
ベトナムの輸出産業の課題
さて、ここまでは輸出産業の成長についてまとめましたが、ここからはさらなる輸出産業の成長に向けての現在の課題についてお伝えします◎
① 人件費の上昇
ベトナムの経済成長とともに、労働者の賃金も上昇しています。これにより、これまでのように安価な労働力に頼った輸出産業の成長は限界を迎えつつあります。
筆者が住んでいる5年間でも賃金上昇率は平均7.4%と、毎年ベースアップが当たり前の状態が続いています。
特に中国やその他の新興国が同様の戦略で輸出産業を拡大しているため、ベトナムは人件費の上昇に対処しながら、競争力を維持する必要があります。
最近ではさらなる安価な労働力を求めて、カンボジアやラオスなどに拠点を移す工場なども出てきているのが現状です。。
② 環境問題と持続可能性
急速な経済成長と工業化により、環境問題が深刻化しています。都市部では大気汚染なども申告で、世界でもトップクラスの大気汚染指数が出ることもしばしばあります。
特に、繊維産業や電子機器産業は大量の廃水や廃棄物を排出し、環境に悪影響を及ぼすことが指摘されています。
各国が高度経済成長期に直面する課題がベトナムでも起きており、環境問題に加えて国民の健康問題などにも直結してるのが懸念点です。
持続可能な発展が求められている中、ベトナムは環境保護と経済成長のバランスを取る必要に迫られています。
③ 技術革新と人材育成の不足
輸出産業の競争力を向上させるためには、技術革新と人材育成が不可欠です。
しかし、ベトナムでは高度なスキルを持つ労働者の不足が課題となっており、特に技術職や管理職においては教育と研修が追いついていません。
これにより、付加価値の高い製品の製造や技術革新が難しい状況にあります。
ただ、こちらは外国からの専門家による教育や国内企業でも研修などの重要性が認識され始めています。
ベトナムの超大手企業VIN GROUPでは、自社の路線バスやタクシードライバーにサービスの教育を実施しています。
これまでの交通機関のサービスとは一線を画したサービス提供を先駆けて行っており、今後は他の分野においても波及していくことが期待されます。
今後の展望とまとめ
ベトナムの輸出産業についての歩みと課題についてまとめました。
直近5年のGDP成長率が平均約6%と急速に経済成長を遂げているベトナムは、今後もさらなる成長に期待がかかります。
そのためには課題である技術革新を推し測り、管理職層の教育に力を入れていくことが求められます。
それと同時に環境問題を食い止める施策を進め、共存していくことが今後の継続的に発展を続けていく鍵となるでしょう。
素晴らしい発展を遂げているベトナムに今後も目が離せませんね!