ベトナムではキャッシュレス決済が急速に発展しています。キャッシュレス決済の中でも特に「QRコード決済」の利用者数が増えています。そこで今回は、ベトナムでのオンライン決済・キャッシュレス決済について解説していきます。
ベトナムではなぜQR決済が人気?
2018年頃からキャッシュレス決済がトレンドとして取り上げられ、コロナ禍を経てさらにベトナムでも急速に広まったキャッシュレス決済ですが、ベトナムでは特に「QRコード決済」が人気です。理由としては
スマホの普及
非接触型の決済
早く、安全で正確な決済
ということが挙げられます。
Statistaのデータによると、2022年のベトナムのスマートフォンユーザー数は6,548万人で、世界第15位、東南アジアでは第3位となり、インドネシアの1億8,770万人、フィリピンの6,970万人に次ぐ利用数です。
さらに、導入店舗側からしても「専門的な機材が不必要のため投資コストが非常に安く、迅速に導入できる」ということもQRコード決済の利用可能店舗が広まった一因と言えます。
政府がキャッシュレス決済を主導
2021年10月首相決定No.1813/QDTTgとして「2021~2025年のベトナムの キャッシュレス決済の発展枠組みに関する合意」が発表され、多くの目標が示されました。
例えば、
2025年までにeコマースにおけるキャッシュレス決済比率を50%以上とすること。
15歳以上の成人の銀行口座保有比率 を80%以上とすること。
キャッシュレス決済の件数・金額の伸び率を年平均20~25%とすること。
モバイル決済の取引件数の伸び率を年平均50~80%、金額の伸び率を同80~100%とすること。
キャッ シュレス決済を行う個人や企業の比率を40% 以上とすること
などを掲げています。
国全体でキャッシュレス決済を推し進めていく政策がとられています。
あらゆるサービスの決済に対応
ベトナムのQRコード決済は、映画や飛行機のチケット購入、通信費、光熱費や水道料金の支払い、衣類、化粧品、家電製品の購入に至るまであらゆるサービスで利用可能です。
州立銀行の統計によるとベトナムにて、QR コードによる決済は、2023年1-7月は2022 年の同時期と比較してQRコードでの決済数が124.15%、金額で16.12%増加しています。
銀行口座保有率が急増
2023 年5月にベトナム国立銀行 (SBV) が開催したイベントでは、ベトナム国立銀行のグエン・ティ・ホン総裁が「ベトナムの成人の約74.63%が銀行口座を持っている」と発表しました。
2017年には3割台だった銀行口座保有率のため「ベトナム人の銀行口座保有率は低い」と言われてきましたが、ここ数年で急速に保有率が伸びてきています。
現在ベトナムではモバイルマネー口座が広く一般的に開設され、日常生活の一部となっています。都市部のみならず田舎にもサービスが浸透しています。
今後はクレジットカードの浸透か
国家銀行(SBV)が労働新聞社と協力して開催したワークショップ「ベトナムにおける電子決済市場の発展促進」で発表されたデータによると、2023年7月時点で国内で流通しているクレジットカードの枚数は81万1,400枚以上に達し、2022年の同時期と比べて42.5%増加しました。
2023年7月末時点で、ベトナムには国内クレジットカードを発行するカード発行会社が15社あり、それらの平均成長率は 29.6%/年で、国際クレジットカード会社の平均成長率17.72%/年よりも高くなりました。
しかし現時点では、ベトナムでは国内クレジットカードの普及率が低いとされており、農村部に約6,300万人の人口を抱えるベトナムでは、ベトナムの人口のわずか4%強しかクレジットカードを所有していません。
同ワークショップでは今後、国内クレジットカードを「国民的クレジットカード」として、学生や非熟練労働者、季節労働者など収入源が少なく不安定な顧客層を含む、あらゆる顧客層・あらゆる分野に普及を目指すとしました。
外国人もベトナムでキャッシュレス決済可能?
以上のようにベトナムに浸透しつつある便利なキャッシュレス決済ですが、ベトナム旅行中の外国人やベトナムで就労する外国人は、キャッシュレス決済の恩恵を受けることができるのでしょうか?
以下より、ベトナムにおける外国人のキャッシュレス決済について解説していきます。
オンライン決済は長期滞在者向け
ベトナムでは2019年まで旅行者でも銀行口座開設が可能でしたが、2020年以降は法規制が厳しくなり、旅行者や非居住者の口座開設は不可となりました。
2023年現在も銀行口座開設ができるのは12ヶ月以上のベトナム滞在許可を取得している方のみです。
オンライン決済の利用登録はどのアプリも基本的に「ベトナムの携帯番号」「ベトナムの銀行口座」が必要となるため、QRコード決済などのオンライン決済の利用は基本的には長期滞在者向けとなっています。
短期滞在者はデビットカードが便利
都市部の大きな店舗を中心にクレジットカードが利用できるところが数多くあります。最近では、クレジットカードに付帯したタッチ決済が可能な店舗もあり、パスワードの入力などがなく迅速に支払いを済ませることができます。
ベトナムではクレジットカードよりもデビットカードが主流。支払いがすぐに確認できるデビットカードでの決済が安心でスムーズです。
しかし、市場や個人商店・昔ながらのローカルレストランなどではクレジットカード支払いが普及していないところもあるため、小額紙幣を中心に現金を持ち歩くと安心でしょう。
ベトナムに交通系ICカードはある?
2021年に開業したハノイメトロではICカードでの入場方式も導入されています。チャージは駅に設置されたチャージ機を通して行います。
ホーチミン市都市鉄道管理局(MAUR)は2024年開業を控えているホーチミン市内地下鉄では、「乗車券として、ICカードを導入する」と発表しています。
ベトナムでは交通系ICカードはあるものの、日本のようにコンビニ等では利用できません。今後ベトナムの公共交通機関の発展に伴って、交通系ICカードの利用場面も広がっていくのかもしれませんね。
日本でもベトナムの決済方法が可能に
2023年3月からMBBankアプリのQRコード決済サービスが日本での支払いに利用できるようになったとニュースになりました。
MBBankアプリのユーザーは「訪日時に、MB Bank決済対応を申し込んだStarPay加盟店にて、MBBankアプリを使って、デビッド方式にて日本で支払いができる」ということです。利用可能店は「ホームセンターコーナン」「コーナンPRO」「キャンプデポ」や「アルペン」「スポーツデポ」「ゴルフ5」などです。
ベトナムで働く長期滞在者にとっては、ベトナムで利用している決済アプリが日本国内でも使用できるようになったことで利便性が高まりすね。今後も、訪日ベトナム人の増加に伴って加盟店が増えることが期待されています。
また、ベトナムの大手銀行の発行するキャッシュカードには、デビットカードの機能もついていることがほとんどです。
ベトナム国内での使用はもちろん、日本を含むベトナム国外でATMからのキャッシング、デビットカードとしてのお買い物が可能です!
ベトナム現地で生活する方にとっては、敢えて日本に行くからといって日本円を準備する必要がなく、そして円安などの為替の影響も受けなくてすむのは魅力的で非常に便利です!
まとめ
今回はベトナムのオンライン決済・キャッシュレス決済事情について解説しました。国を挙げてキャッシュレス社会を目指すベトナム。銀行口座普及率の大幅な上昇など、その成長は目が離せません。
その一方でキャッシュレス決済の増加に伴い金融犯罪などリスクがあることも利用の際にはお忘れなく!
ベトナムで働く人はオンライン決済に登録するとクーポンやキャンペーンなどの恩恵が受けられ、より便利で暮らしやすくなることは間違いないでしょう。
この記事が参考になりましたら幸いです。