- ベトナム転職インタビュー
- 2023.10.24
(ベトナムローカル企業で唯一の日本人として活躍する下津谷さん)
自己紹介
私は埼玉県出身の51歳です。高校は國學院栃木高校を卒業し、大学は金沢工業大学・電子工学科にて当時珍しかった大型平面テレビ(背面変調方式フラットCRT )の研究に従事しました。
大学卒業後は技術者になる予定でしたが、大学3年生の冬に実家へ帰省した際、兄が断った英国留学の話が突然舞い込み、大学卒業を条件に2年半の間英国へ留学する機会を得ました。留学した当初、英語が全く出来なかった為、語学学校の一番下のクラスからスタートし、途中学校の学習プログラムの一つである「職業経験コース」でカンタベリー大聖堂やアッシュフォード・ツーリスト・インフォメーションセンターにて英国の方々と一緒に働きながら生の英語を習得し、最終的にはセントラル・ランカシャー大学で観光学と国際ビジネスを習得しました。
帰国後は父が経営する観光会社にて社会人生活をスタートさせ、留学時代に培った語学力や積極性を生かし、これまで多くの業界にて経験を積んできました。
プライベートでは旅行が大好きで、ベトナムの長期休みの際には愛車 (HONDA VISION 110CCバイク)で北部の観光地や村々を廻り、ベトナムの自然や田舎の素朴な人々との出会いを楽しんでいます。
職務経歴
1社目の観光会社では国内新規開拓営業を4年間担当しました。引継ぎ顧客を持たない飛び込み営業専門社員として、付近にある中小企業へアポなしで訪問し、社員旅行などの提案などを行いました。
2社目以降は海外営業に従事し、化学品、LED、工作機械・研磨機器、印刷機器部材、漏水検査機器などの幅広い業界で主に新規顧客開拓、既存顧客サポート、技術営業などを行いました。その間タイにて営業拠点の設立と運営、ベトナムにて製造・販売拠点の設立と運営に携わりました。現地責任者として、法人設立、現地スタッフの雇用、組織づくり、新規顧客開拓、営業チームへの技術指導、製造ラインの立ち上げサポート等に携われた事は今でも良い経験として生かされています。
トータルでは国内営業で4.5年 、海外営業で20年間従事致しました。その間、タイ、マレーシア、台湾、ベトナムに約10年間駐在し、主にアジア圏、インド、欧米の顧客をサポートしました。
Q1.海外転職を目指した理由は何ですか。
海外が好きだった事です。また、自分の能力が一番生かせると考えたからです。
Q2.どのような海外転職活動をされていましたか、また、転職の軸、国の優先順位など教えてください。
当初、欧米やアフリカなど今まで働いたことがない場所に挑戦したいと思い応募しておりましたが、過去の職務経験を重視する採用側からは評価されませんでした。その後、現実的な場所として長年勤務して来たアジア圏に絞る事にしました。そして以前会社設立から業績を伸ばすまで責任者として従事したベトナムに興味が湧きました。ベトナム駐在時に本社の意向でタイ拠点設立に従事する事になり、ベトナムを道半ばで同僚へ引き継いだ為、やり残した感がありました。そこで再挑戦の意味も込めてベトナムで働く事を決意しました。
Q3.現在の会社で働くことに決められた理由は何ですか。
実はお恥ずかしい話、前に勤務していた日系企業を訪越後1ヶ月で解雇され、滞在ビザが切れようとする中、藁をも掴む気持ちで応募しました(笑)。テト休みに直前に解雇され、途方に暮れている中、HRnaviさんに相談したところ、ベトナムの企業であれば、今日本人営業を探していると教えてもらいました。建築業界での営業経験はありませんでしたが、新しい分野に挑戦する事を厭わない私は周囲からの心配をよそに、応募する事にしました。幸いにも1週間の間に2回の面接で内定をもらう事が出来ました。(笑)
Q4.現在の会社ではどのようなポジション、業務を担当されてますか。
営業チームのマネジャーを任されております。自身の担当業務として、営業面では日本、タイ、シンガポールなどの英語圏の企業における工場・倉庫建設プロジェクトや既存工場の改修工事などの投資情報を収集し、お客様のサポートをします。具体的には下記の通りです。
- 将来新規投資を行うであろう潜在顧客をリストアップし、アポを取って会社訪問。
- 将来の投資計画を伺い、良好な関係を築けるよう努力します。
- 実際に投資計画がスタートすると、営業窓口担当者として、技術的な事からお客様のお悩み相談まで全てサポート。必要に応じて各種日本語解説書を作成します。
- 入札書類を作成する間、お客様と自社のスタッフの間に立ってコーディネーター役も担います。
- 入札を勝ち取ると、プロジェクトマネジャーの通訳、補佐役として、またお客様のコンサルタントとして両者とプロジェクトをサポートします。
- プロジェクト物件の引き渡し後もお客様との関係を切らさず、保証期間の2年間はメンテナンス管理の為に定期的にお客様を訪問、不具合を確認、補修します。
その他、中国・台湾チームのベトナム人営業担当の指導も担います。
技術関連では、見積書、建築図面、設備図面他のチェックや、お客様に建築仕様確認と調整を行ったり、建築スケジュール調整、上記資料の日本語解説書、お客様へのプレゼン資料や本社側への報告資料の作成を行います。
Q5.これまでの業務経験で活かせているポイントはございますか。
以前勤務した旅行会社や、塗料会社の工場修繕チーム時代の新規顧客開拓経験と海外留学時代に培った行動力は現職でも活かせていると思います。例えば、Google Mapやネット上の情報を上手く活用して、新規お客様を開拓し、各社ともに良い関係を保てています。
日系企業へ営業の電話を掛ける際、先方のベトナム人スタッフが電話に出るとそこで働く日本人の名前を出さないと取り次いでもらえないということがよくあります。そういう場合もネットから責任者の情報を見つけだし、取り次いでもらいます。その繰り返しを行い、数百社と継続して関係が築けると年に数社は大小プロジェクト案件の連絡が来ます。その中の1/3でもプロジェクトを勝ち取れるよう、お客様対応を行っています。
Q6.ベトナムにお越しなられて、仕事面、プライベートとも第一印象はいかがでしたか。
2014年に初めてベトナムに来た時は現地責任者として人材の採用から経営・営業方針の策定まで全て行う立場だった為、ベトナム人従業員も従順で一生懸命業務に取り組んでくれた為、正直働きやすい国だなと言う印象でした。7年後に再来越して務めているベトナム企業では、外国人は自分一人と言う環境下、企業文化やベトナム人の考え方が標準となるため、それに合わせるのに非常に苦労しています。
また、プライベートでは、交通ルールや各種マナーが日本での常識とはかけ離れていると感じました。バイクの道路逆走や、信号無視、コンビニの店員が多額のお釣りを間違えて指摘しても謝罪しないなど、当初はとてもストレスを感じました。
Q7.ベトナムライフにおいて、仕事面、プライベートで驚いたこと(日本とのギャップ)
仕事面では日本とは違う働き方にギャップを感じました。例えば、事前にきちんと打ち合わせをした内容が、次の仕事に反映されなかったり、同じようなミスを何度もしたり (過去の失敗から学ばない)、依頼仕事を提出期限ギリギリまで完成させなかったり(確認、修正対応に苦労)など挙げればきりがない程ありました。
但し、上記の事が原因で同僚や上司と大喧嘩しても、翌日にはリセットされ以前と同様の関係に戻れることが多く、良い意味で日本人気質とのギャップを感じました。その気質は私に合っていると感じます。彼らはミスもリセットしてしまい、再度同じ間違いを起こすのは悪いところでありますが。。。(笑)
Q8.ベトナム人と働くことについて感想はいかがですか。考え方、文化の違いなどで困ったことはありますか?
お客様の要望よりも自分の考えやベトナムの標準を優先させてしまったり、日本でいう報告・連絡・相談が出来ない(相談もなく、物事を勝手に進め、結局間違える事)など、困ったことが多々ありました。文化の違いというのは色濃くあるなと感じます。しかし、知らないだけで教えてあげるなどして、一度気持ちが伝われば、真面目に一生懸命やってくれるという良い点もあります。自分が動いて見本を見せ、一緒にやって、覚えてもらうというのがこの国でも有効だと学びました。そうしたプロセスを経ていい関係で仕事ができるようになりました。ベトナム人は人懐こくフレンドリーなので、何かやってあげたいという気持ちになります。よく、お菓子を買ってきてあげたり、食事をしたり、一緒に掃除をして交流を深めています。
(2023年の国際ウーマンズデイの日に社内で撮った写真です)
Q9.お仕事で問題に直面した際に、ご自身で克服に向けてどのように取り組まれましたか。
まず自分で考えて行動しました。ただ始めは建築の事はまったく分かりませんでしたので、建築の入札に最低限必要な3つ(ベトナム語、英語の専門用語で埋め尽くされている見積書、建築図面、設備図面)をまず日本語訳にすることから始めました。分からない単語はGoogleで調べ、少しずつ建築用語、建築について覚えていきました。
また社内でベトナム人と一緒に働く上で、下記の点について取り組みました。
① 人がやってくれるのを待たない
② 主張すべき事はハッキリ言う
③ 自分のやり方、ペースで回りの人を巻き込む
④ お客様からの代弁者として、上層部にハッキリと物を申す
⑤ 社内で過去に行ったことがない業務を行ってもらう場合、自分でまず調査し、具体例を示してアドバイス、リードする
⑥ ベトナム人への日ごろからの感謝、サービス
社外 (対お客様)では、過去にやった事がない業務依頼を受けても、まず自身で勉強し、取り組む事 を心掛けてました。
Q10.ベトナム転職を実現されて、現在に至るまでの感想フィードバック
日系、ベトナム企業に問わず、成果を上げないとプレッシャーやストレスを感じることはベトナムでも同じです。会社によっては就業契約期間中であっても、仕事への意欲を見せず、成果が出なければ、退職を促されるケースがあります。一方で成果を上げる事が出来れば、その分期待以上の大きな収入が得られることもあります。(※特にベトナム企業)
就業文化の違いから仕事上でベトナム人スタッフとの意思の疎通が難しく、スムーズに仕事を進める為にも自分が考える以上にコミュニケーションを密にとる必要があると感じました。
Q11.今後のキャリアプランについてどのようにお考えですか。
ベトナムは他の東南アジア諸国と比較しても成長著しいですし、引き続きベトナムで頑張っていこうと考えています。
Q12.ベトナム生活におけるプライベートの過ごし方
週末は市内バスに乗り、知らない町や村、市場、地場の観光地を散策したりしています。長期休みの際はバイクで遠出をして、田舎の雰囲気を楽しんでいます。これまで、ベトナム北部ではラオカイ、サパ、ライチャウ、イエンバイ、ソンラ、ビンイェンなどに行きました。山々の風景が綺麗なハザンにはまだ行けていないので、次のテト休みに行きたいと考えています。
Q13.海外転職を目指される方にアドバイス
自分の生かせる能力を理解した上で、それが役立つ仕事を探して、挑戦して下さい。
また、目標、挑戦心、向上心を持って海外に転職されるとそれを高く評価してくれる企業はたくさんあります。大きな目標とそれに対する努力を怠らないで下さい。
結果が伴えば、大きな成功を収めるチャンスがあるのも現地採用の魅力です。
(2023年7月に香港企業様工場建設プロジェクトの起工式(地鎮祭)の際、建設工事にかかわるスタッフと共に撮った記念写真です)