本記事ではベトナムで気を付けるべき病気およびベトナムの医療事情についてご紹介したいと思います。
ベトナムでかかりやすい病気は?
万が一病気やけがが起きた時は?
受診費用や海外保険はどうしたらいいの?
などの疑問にお答えできる記事ですので、お役に立てれば幸いです。記事の最後に「ハノイ・ホーチミンの病院一覧」をGoogleマップのリンクと共に掲載していきます。
ベトナムでかかりやすい病気
外務省のホームページではベトナムの医療事情について以下のように紹介されています。
一般的にわれわれ外国人が生活しているような生活環境であれば、かぜや胃腸炎といった日本でも日常的にみられている病気が大部分を占めています。
しかし、デング熱、日本脳炎、食中毒、細菌性赤痢、アメーバ赤痢、A型肝炎、B型肝炎、腸チフス、狂犬病、結核、マラリアといった日本より感染のリスクが高い病気も数多く存在するので、これらの病気に対する予防対策、健康管理を日頃からおこなっておく必要があります。また、交通事情が劣悪であることから、交通事故に遭わないための注意も必要です。
現地の人々が平気で食べられるものでも、ベトナム渡航直後は食事や飲料水に慣れず腹痛を起こしたり、慣れない環境で抵抗力が落ちたりすることにより体調を崩しやすくなるようです。
事前に病気を防ぐ知識をつけ予防を心掛けることで、リスクを減らすことが大切です。
予防接種は受けた方がいいの?
南米やアフリカなどでは予防接種証明書の提示を求められますが、2023年現在ベトナムでは日本からの入国時に予防接種証明書の提示は求められていません。
予防接種は必要ないのでしょうか?
予防接種を受けることで予防できる病気は限られていますが、予防接種を受けることで感染症にかかるリスクを下げることができます。必要な予防接種は、渡航先、渡航期間、渡航形態、自身の年齢、健康状態、予防接種歴などによって異なります。事前に渡航先の感染症情報を収集するとともに、それぞれの予防接種について理解した上で、渡航者一人一人が、どの予防接種を受けるかを決める必要があります。
このように、渡航期間や滞在先、個人の予防接種歴によって感染予防の対応は異なりますが、ベトナム滞在中の予期せぬ感染のリスクを減らすためにも、各種予防接種が推奨されています。
ご自身の母子手帳や予防接種証明書を用意して渡航前(3か月前以上前が好ましい)にかかりつけ医と相談しておくことをお勧めします。かかりつけ医がいない場合は、予防接種がスムーズに受けられる海外渡航者専門の医療機関に相談するとよいでしょう。
予防接種に加えて、
不衛生な環境での飲食を避ける
慣れない飲食店での生食や氷を避け、十分に加熱し食品の保存方法に留意する
蚊が媒介する病気を防ぐため虫よけスプレーを塗布し、肌を露出しない
犬などの動物に不用意に近づかない
道路の横断は十分注意し、余裕を持って行動する
規則正しい生活をし、身の回りの清潔を心掛ける
など、日常的な心掛けと行動で感染や傷病のリスクを減らすことができます。
万が一病気やけがが起きた時
救急車を呼ぶ場合
緊急の場合に電話番号「115」に連絡して公的な救急車を呼ぶことは可能ですが、ベトナム語しか通じない、搬送先の病院の指定ができない、一度入院すると転院が困難となることが多いといった理由よりお勧めできません。外国人のよく利用する病院やクリニックの日本語受付に連絡をして、その医療機関が所有している救急車を手配するか、自力でこれらの医療機関の救急外来を受診することをお勧めします。
ベトナムで治療が受けられない状況の場合、高度な医療が受けられる近隣国(タイやシンガポールなど)に緊急移送され治療を受けることになることがあります。その際は移送費や治療費、入院費などで莫大な金額を請求されることになりますので、渡航前に保険に加入しておくなど準備が必要です。
事故状況 | 治療・救援費用保険金支払額(円) |
友人から黄疸の症状を指摘され受診。膵腫瘍と診断され4日間入院。 | 4,070,000 |
胸の痛みを訴え受診。心筋梗塞と診断され、チャーター機でバンコクまで医療搬送し12日間入院。家族が駆けつける。 | 9,683,931 |
めまい・呼吸困難を訴え受診。6日間の入院中、ふらつきによる転倒で腰椎圧迫骨折。家族が駆けつける。医師が付き添い医療搬送。 | 4,482,303 |
手足のしびれ・感覚麻痺を訴え受診。硬膜下血腫と診断され15日間入院・手術。家族が駆けつける。医師・看護師が付き添い医療搬送。 | 4,482,432 |
足がもつれ転倒し救急車で搬送。心不全・心筋梗塞・心房細動と診断され現地病院から設備が整った病院へ搬送後9日間入院。家族が駆けつける。医師・看護師が付き添い医療搬送。 | 4,594,385 |
朝、めまいがし体が動かなくなる。脳梗塞と診断され12日間入院。医師・看護師が付き添い医療搬送。 | 4,530,000 |
(価格ドットコム保険ベトナム(ホーチミン)の医療費)より引用
自力で病院を受診する場合
ベトナムの公立病院は大勢の患者で混雑しており、長時間待たされることが日常化しています。しかも全てベトナム語で対応しなければならないので、公立病院の利用はお勧めできません。外務省も外国人の多くが利用している私立の病院・クリニックの受診をお勧めしています。
軽い体調不良など医師の診察を受けるほどでもないと判断する場合は、市内にある薬局で症状を説明すると処方箋なしで症状に応じた薬を処方してもらえます。その場合は薬代のみの支払いで済みます。ただし外国製の薬のため、体質に合わない場合も考えられるので注意が必要です。
受診する病院の選び方
万が一に備えて、緊急対応ができる病院を事前にリストアップしておくと安心です。まずは加入している保険会社に問い合わせたり、病院のサイトや電話から情報収集していくと良いでしょう。その際、確認しておきたいポイントは以下の通りです。
英語や日本語対応のスタッフがいるか
加入している保険が利用できるか
支払方法(現金のみの場合もある)
持参物(身分証明書や保険加入証明書など)
ベトナムでの受診料はいくら?
ベトナムで外国人向けの医療機関で医療を受けた場合、自由診療(100%負担)になるため高額になることがほとんどです。また、ベトナム公営の救急車を呼んだ場合でも費用がかかります。
また、「ベトナムの公立病院では治療を受ける前に現金で一時金を支払うことが求められる」と報告されているため、外国人対応可能の病院が受診できる海外渡航者用保険に加入しておくことが安心です。
項目 | ベトナム(内容) | 日本(参考・2016年8月時点) |
救急車の料金 | ①公営:5,000円 ②民営:9,400円~ |
①無料 ②通常利用しない |
初診料 | 8,200円 | 2,820円 |
病院部屋代 (1日当たり) |
①個室:70,400円 ②ICU:- |
①個室:30,000円~100,000円 ②ICU:80,000円~100,000円 |
(ジェイアイ損害火災保険株式会社ベトナム医療事情)より一部引用
ベトナムで使える保険はある?
万が一、ベトナムで医療を受けることになった場合に高額の支払いは避けたい…。そこで、知っておきたい保険や制度についてご紹介します。
旅行や出張など短期滞在向け
海外療養費
海外療養費制度は、海外旅行中や海外赴任中に急な病気やけがなどによりやむを得ず現地の医療機関で診療等を受けた場合、日本で健康保険組合加入している場合には、申請することにより一部医療費の払い戻しを受けられる制度です。
旅行など短期の海外滞在を想定した制度であり、補填を受けられる条件などが細かく設定されています。加入している保険組合等のサイトで条件や申請方法を確認しておくと良いでしょう。
(参考)全国健康保険協会海外で急な病気にかかって治療を受けたとき
クレジットカード付帯の保険
ほとんどの場合、加入の手続きが不要で利用することができます。短期の海外滞在を想定したものが多く、クレジットカード会社によって受けられる補填の条件や内容が異なるので事前の確認が必要です。
長期滞在者向け
個人加入の医療保険
ベトナムで働くなど、1年以上の長期滞在を想定した保険プランが充実しています。保険額や条件もプランによって様々ですが、医療相談や病院紹介などサービスが多岐にわたり万が一の際に心強い存在です。滞在期間や補償内容などご自分の条件に応じたものを選ぶと良いでしょう。
ベトナム国内の医療保険
ベトナムで3ヶ月以上勤務する場合は、外国人であってもベトナム国内の医療保険に加入します。しかし、ベトナムの医療保険が適用できる病院が定められており、前述したようにベトナム公立病院の混雑状況や医療レベル、ベトナム語での診療などを考えると、公立病院の利用はお勧めできません。外国人対応の医療機関の場合は、ベトナム医療保険の適応外となります。
さらに、近隣国への緊急移送治療が発生した場合のことを考えると、個人で医療保険に加入しておくことが一般的と言えるでしょう。
日本で加入している保険はどうなる?
公的年金や健康保険は?
国民健康保険は「非居住者」になった時点で被保険者ではなくなるので医療費が10割負担となります。
しかし、ベトナムに住みながらも日本の住民票を抜かず「居住者」の扱いで国民健康保険等に加入している場合は、一時帰国時に日本の医療を保険適用で受けることができます。
一方、いわゆる「年金」といわれる「老齢基礎年金」「遺族年金」「障害年金」は住民票を抜き海外に転居した場合でも、申出により国民年金の任意加入制度を利用することができます。任意加入には手続きが必要です。申出した日から被保険者資格を取得します。手続きは、お住まいの市区役所・町村役場国民年金担当窓口で行ってください。
(参考)日本年金機構/海外への転出
これらの年金を受け取る場合は条件があるため、日本年金機構のサイトや市区役所・町村役場の担当窓口で確認しておくとよいでしょう。
こちらの記事もよろしければご参照ください▼▼
日本国内で加入している個人医療保険は?
基本的には、海外居住者であっても保険に加入し続けることは可能なようです。しかし、保険の内容によっては診断や治療を日本で受けることが条件になっていたり、その他様々な条件があったりするため渡航前に保険の内容を確認しておく必要があります。
もしものときは帰国して病院に行ける?
前述したように、ベトナムに住みながらも日本で「居住者」の扱いで国民健康保険等に加入している場合は、一時帰国に日本の医療を保険適用で受けることができます。しかし、渡航時に住民票を抜いて「非居住者」になっている場合は帰国後もう一度、住民票を取得し保険料を納めなければ医療保険適用にはなりません。
短期の一時帰国の場合、自治体によっては住民票の再取得が難しいこともあるため注意が必要です。また、日本の住民票を再取得した場合、条件によっては税金が発生することも念頭に置いて置かなければなりません。ただし所得税に関しては、ベトナムと日本の間に「租税条約」が結ばれていますので、どちらかの国で納税していれば二重課税を課せられることはありません。
長期滞在者の場合「病気になっても一時帰国すればいい」と考える方もいるかもしれませんが、一刻を争う緊急事態では移動に時間のかかる日本での治療はあまり現実的ではないでしょう。
日本人が安心して受けられる医療機関
ハノイ
【ハノイフレンチ・ホスピタル】
診療科:総合診療科・内科専門科、外科、脳神経外科、小児科、産婦人科、皮膚科、耳鼻咽喉科、眼科、整形外科、精神科、麻酔科、歯科
診療時間:月~金 8:30~17:00/土 8:30~12:00/日曜日 休診
【ビンメック国際総合病院】
診療科:総合診療科、内科専門科、外科専門科、整形外科、脳神経外科、小児科、腫瘍科、産婦人科、皮膚科など
診療時間:月~金 8:00~17:00/土 8:00~12:00/日曜日 休診
【ファミリーメディカルプラクティス・ハノイ】
診療科:一般診療、小児科、皮膚科、整形外科、婦人科、循環器科、眼科、耳鼻咽喉科、歯科、理学療法、心理療法
診療時間:24時間365日オープン(いつでも医師と看護師が院内に常駐しています)※予約可能な時間帯:月〜金:8:30〜17:30/土:8:30〜12:30
【ラッフルズメディカル・ハノイ】
診療科:総合診療や婦人科、皮膚科、循環器内科、理学療法、健康診断、予防接種など
診療時間:月〜土 8:00〜20:00/日休診
【さくらクリニック 】
診療科:一般内科、小児科、歯科、循環器科、消化器科、腎・泌尿器科、呼吸器科 、内視鏡、予防接種、画像診断、婦人科、健康診断
診療時間:月〜土 8:30〜12:30 / 13:30〜18:00、日曜日 休診
【東京インターナショナルクリニック】
診療科:総合内科、小児科、メンタルヘルス科、循環器科、整形外科、泌尿器科、婦人科、消化器科
診療時間:月~土 8:00~17:00/日曜日 休診
【T-Matsuoka Medical Cener(T松岡メディカルセンター)】
診療科:内科、小児科、産婦人科、眼科、皮膚科、耳鼻科など
診療時間:月~土 8:00~18:00
【JAPAN International Eye Hospital(日本国際眼科病院)】
診療科:眼科全般
診療時間:8:00~12:00 13:00~17:00、休診日:ベトナムの祝日に準ずる。
【Lotus Clinic Hanoi(ロータスクリニックハノイ)】
診療科:総合診療科(プライマリーケア)、健康診断、予防接種など。
診療時間:月曜~金曜9:00~12:30 14:00~18:00、土曜9:00~13:00
歯科
【さくらクリニック (上記参照)】
【West Coast International Dental Clinic, Hanoi
(ウエスト コースト インターナショナル デンタル クリニック、 ハノイ)】
診療時間:月曜~金曜8:30~19:00、土曜9:00~18:00
【ハノイ三国歯科】
診療時間:火~土 9:00~12:00 14:00~18:00、月・日・祝日は休診
ホーチミン
【Lotus Clinic (ロータス クリニック)】
診療科:総合診療科(プライマリーケア)、内科、小児科、健康診断、予防接種
診療時間:月~金曜日9:00~12:30 14:00~18:00、土曜日9:00~13:00
【Family Medical Practice, Ho Chi Minh City(ファミリー メディカル プラクティス ホーチミンシティ)】
診療科:総合診療科、内科、小児科、整形外科・外科、皮膚科、婦人科、耳鼻咽頭科、理学療法など。
診療時間:(1区)月曜~日曜 8:00~18:00、(2区)24時間、(7区)月曜~金曜 8:00~17:00、土曜 8:00~12:00
【Raffles Medical Ho Chi Minh(ラッフルズ メディカル ホーチミン)】
診療科:総合診療科、内科、小児科、産婦人科、皮膚科、耳鼻咽喉科、眼科、外科、整形外科、泌尿器科、放射線科、呼吸器科、消化器科、歯科、整体、心理カウンセリングなど。
診療時間:月~金曜日8:00~18:00、土曜日8:00~17:00
【DYM Medical Center Vietnam(DYMメディカルセンターベトナム)】
診療科:内科、外科、整形外科、呼吸器科、産婦人科、耳鼻咽喉科など
診療時間:日本人医師 月火木金土 9:00~13:00、14:00~18:00、ベトナム人医師 月~土 8:00~12:00、13:00~17:00
【Franco-Vietnamese Hospital (フランコ ベトナミーズ ホスピタル、通称FVホスピタル)】
診療科:総合診療科、内科、外科、小児科、産婦人科、整形外科、皮膚科、耳鼻咽喉科、眼科、泌尿器科、口腔外科、歯科、放射線治療、整体、理学療法、カウンセリングなど。
診療時間:月~金曜日8:00~17:00*救急外来は24時間体制。
【Vinmec Central Park International Hospital(Vinmecセントラルパークインターナショナルホスピタル)】
診療科:内科、外科、小児科、産婦人科、整形外科、眼科、皮膚科、耳鼻科など
診療時間:救急は24時間対応
歯科
【West Coast Dental Clinic (ウエストコースト デンタルクリニック)】
診察時間:月~金曜日8:00~20:00、土・日曜日9:00~17:00
【Smile Dental Clinic(スマイルデンタルクリニック)】
診療時間:月火木金 9:00~12:00 13:00~18:00、土9:00~16:00
【ありが歯科】
診療時間:月火水金土 9:00~12:00 14:00~19:00、土13:00~17:00
まとめ
今回は、ベトナムで気を付けるべき病気と万が一の際の対策についてお伝えしました。ベトナムでは現在、2万人以上の日本人が暮らしています。事前に準備をしておけば、恐れることなく快適なベトナムライフを送ることができます。この記事が、お役に立てましたら幸いです。