ベトナムは年々、経済成長を遂げ日系企業の進出も活発です。こうした状況から「日本人が働きやすい」といわれています。
しかし、ベトナムで働き、家族と移住するためいくつかの手続きが必要となります。
そこでこの記事では、「ベトナムでの労働許可証の取得から家族の帯同ビザに関する手続き」や「帯同の不安を解消する情報」をお届けします。
ベトナムで働き、家族を帯同するには?
ベトナムで家族と暮らすための一般的な流れについて解説していきます。
まずは労働許可証を取得する
ベトナムで働き、家族と共にベトナムに移住するためには、
①労働許可証の取得
②一時在留許可証の取得
③家族の居住許可申請
の手続きが必要です。1年を超えるベトナム滞在者には、一時在留許可証(テンポラリーレジデンスカード=TRC)の取得が義務付けられています。
労働許可証(ワークパーミット=WP)とは?
外国人がベトナムで働くために取得する証書です。
3ヶ月以上ベトナムで働く場合は、労働許可証(WP=ワークパーミット Work Permit)を取得する必要があります。
混同されやすい「就労ビザ」は、45日以上ベトナムに滞在する場合に必要となるビザです。
一時在留許可証(テンポラリーレジデンスカード=TRC)とは?
ベトナムで労働許可証(ワークパーミット)の手続き後に、ベトナム国内で申請して取得します。
期限は労働許可証の有効期限に準じ、最長で5年間となっています。
ベトナムの労働許可は厳しい?
労働許可証は誰でも取得ができるものではなく、取得にかかる要件を満たす必要があります。
【管理職の条件】
管理職経験者(社長、部長、マネージャーなど)
※ベトナム現地法人の社長や組織の代表者(駐在事務所長)に限る
【専門家の条件】
大学の学士号以上または学士と同等とみなされる学位を取得しており、ベトナム国内で従事する職務に関する分野での3年以上の同分野の職務経験があること。または、国外の機関、組織または企業により専門家と認定された証明書を持つ者
【技術職の条件】
高卒・専門・短大卒以上(技術に関する訓練を1年間以上)かつ3年以上の実務経験がある、もしくはベトナムでの業務に関連性のある5年以上の実務経験がある者
※職務経験はベトナム国外での実績のみ有効となります。
※上記は2023年11月時点の情報です。法改正等がありますので随時最新の情報をご確認ください。
独立行政法人日本貿易振興機構/外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用
緩和措置:大学の卒業学部とベトナムでの職務の適合が不要に
最近の法改正により、ベトナムで働く外国人専門家や技術者の条件が変更されました。
以前は、「教育を受けた専門分野での実務経験」が必要であり、さらに大学の卒業学部とベトナムでの職務内容が一致していることが求められていました。新しい規定ではこの要件の一部が撤廃され、「ベトナムでの職務に適合した実務経験」が重要視されるようになりました。
(緩和された例)
経済学部を卒業し、日本で6年間ITエンジニアの実務経験がある日本人が、ベトナムでITエンジニアとして働く
このように、ベトナムでの仕事内容に沿わない学歴を持つ外国人も、自分のスキルや経験を活かしてベトナムで働く機会が広がったと言えます。
「専門家」の許可は厳格化?
「専門家」の場合、以前は日本側の企業からの証明があれば、比較的簡単に労働許可証が取得できていましたが、コロナ禍や法改正により「専門家の労働許可が下りにくくなった」という声も聞かれます。
実際に「ベトナムの日系企業から申請したところ1度目では労働許可が下りず、専門のコンサルタントを通して再度申請し、許可が下りた」という事例もあります。
申請手続きはどうするの?
多くの企業が福利厚生として「労働許可証・レジデンスカードの取得費用は全額会社負担」などのサポートを雇用条件として提示しています。
「家族とベトナムに住む予定」の方は、応募時から「帯同ビザを申請したい」と企業側に伝えておき、申請に関する手順を企業とすり合わせしておくと安心です。
個人で労働許可証を申請できる?
ベトナムの労働許可証を個人で申請する場合は、企業側からの申請が必要なことや、ベトナム語での手続きが必要となることなどから日本人個人による手続きが難しくなっています。
このため、申請手続きは企業内のベトナム人総務スタッフ経由で申請するか、専門のコンサルタント在籍する事務所を通じて手続きするのが一般的となっています。
ジェトロのホームページでは、ビザ取得の流れについて詳しく解説されています。
独立行政法人日本貿易振興機構/ベトナムにおける労働許可書/ビザ(査証)の取得手続き
▼労働許可証の申請方法など詳しくはこちらの記事もご覧ください
家族の帯同ビザ(TT)の取得は?
労働者がビザを取得した後、家族(配偶者や18歳未満の子ども)が帯同する場合には、家族の居住許可申請を行う必要があります。
期間が1年未満だとビザ、1年以上はカードとして発給されます。
必要書類
- 就労者と家族のパスポート
- 戸籍謄本家族全員分の写し
- 就労者のビザ、就労者の勤め先の企業ライセンス
- 申請書類(勤め先の代表者の署名・押印)
- 証明写真
家族の健康診断書は必要?
労働許可証の申請には健康診断書の提出が求められますが、ベトナムの帯同ビザ申請や更新には家族の健康診断書の提出は求められません。
どのくらいで発給される?
申請からおよそ2週間程度で発給されます。この期間は、パスポートが手元にないため国外への移動やベトナムの国内線であっても飛行機に乗ることができませんので注意が必要です。
また、帯同ビザの申請の前段階である、労働許可証と一時滞在許可証の取得には1カ月~最長で半年と時間がかかることもあるため、これらの手続きが完了してから「家族をベトナムに連れてくる」という人も多いようです。
帯同ビザの更新は大使館が混雑していなければ、1週間程度で完了します。
ビザとパスポートはセットで持ち歩く
発行されたテンポラリーレジデンスカードや帯同ビザは、パスポートと合わせて持ち歩くようにしましょう。
特に、飛行機に乗る際は必ずテンポラリーレジデンスカードや帯同ビザなどの「ビザ」の提示を求められます。
ベトナムは帯同ビザで働ける?
ベトナムでは、帯同ビザでの就労は認められていません。ベトナムで働くには先述したとおり「労働許可証」や「就労ビザ」が必要です。
しかし「越境リモート」などベトナム国外で収益が発生するものについては認められています。183日以上ベトナムに居住する人は所得に応じてベトナムに税金を支払う義務があります。
現在、ベトナム居住者における個人の所得控除は1100万VND/月以下となっており、この額を超えると累進税率が課せられます。
帯同ビザから労働許可証に変更できる?
帯同者がベトナムで就労した場合は、帯同ビザ(TT)から労働許可証(WP)に切り替えることも可能です。
この場合は、先述したように企業に応募をして労働許可証を発行する流れとなります。
実際に、ベトナムへ引っ越したことを機にこれまでの職務経験や専門性を生かしてベトナムで働いている方もいます。
しかし、労働許可証発行の性質上、1年以上勤務ができることが条件であったり、パートタイム勤務での募集は行っていなかったりする企業が多くなっています。
ベトナムの扶養控除は?
ベトナムで税制上の扶養控除の対象になるのは
無所得または100万VND/月以下の収入の子どもや生計を共にする家族(祖父母・甥姪・兄弟を含む)
となっており、被扶養者1人につき440万VND/月の控除を受けることができます。
扶養控除を受けるためには申請が必要となります。しかし、会社によっては配偶者の日本での社会保険料を負担するところもあり、この場合は日本の扶養控除額に準ずる場合もあります。
ベトナムへの帯同は大変?
家族の転職・異動に伴う海外赴任でベトナムに暮らすことになる方は「今後の生活はどんなだろう…?」と不安になる方も多いでしょう。
ここからは、帯同者がベトナムの生活で感じることをお伝えしていきます。
ベトナム帯同のメリット
①海外経験を積むことができる
特に子どもがいる場合は、海外で暮らすことで外国語の習得が身近になることや異文化体験から将来性が広がるというメリットがあるといえます。
また、ベトナムに住むことで、ベトナム国内や周辺国へアクセスしやすく海外経験を積むことができます。
②ベトナムで働く家族のサポートができる
生活面や心理面において家族で協力し合えるというメリットがあります。万が一病気になった時も家族が一緒に暮らしていると安心感がありますね。
また、サービスアパートに入居することで家事負担も少なく、家族との時間や自分の時間を確保することもできます。
③考え方や価値観が広がる
日本とは異なる環境で暮らすことで、異文化や多様な価値観を体感することができます。
ベトナムには「大らか」「他人を気にしない」といった性格の人が多く、日本で閉塞感を感じている方にとってはおすすめです。
また、ベトナムの平均年齢は33歳と若く国全体に活気が感じられます。
④家計が助かることも
企業によっては「帯同者補助」や「家賃補助」の福利厚生が充実している場合があります。
住居によっては水道・光熱費・Wi-Fiが家賃に含まれることから、自宅での水光熱費・通信費が実質無料であることも多く、「ベトナムに住むことで経済面でのメリットが大きい」と感じる方も多くいます。
また、カフェやマッサージ等を日本より安価で楽しめることから、我慢して節約をしているという感覚になりにくいこともメリットとしてあげられます。
ベトナム帯同のデメリット
①キャリアの中断が起こることも
海外在住するにあたって、企業によっては退職や休職をしなければならないこともあるようです。また、子どもがいる場合は子どもの年齢や進路によってはあえて帯同を選択しないということもよくあります。
②環境が合わないことも
日本にいる友人や家族から離れることから孤独感を感じたり、異文化への適応、言葉の壁から生活に不自由を感じたりしてストレスがたまってしまう人もいます。
帯同者のメンタルを保つには?
ここからは、帯同者がメンタル不調にならないためにできる対応策についてご紹介します。
①帯同者のキャリアプランを考えておく
帯同者へのアンケートで帯同中のメンタル不調要因として最も上位に「仕事やキャリアから離れること」があげられます※。
キャリアを中断されることで「生きがい・自己実現・社会性」を失ったと感じたり「収入がなくなる不安」や「将来への漠然とした焦り」を感じたりします。
今後のキャリアプランを事前に描くことで、例えば「学校に通う」「資格の勉強をする」「リモートワークで働く」「現地採用で働く」「ボランティア活動をする」といった自己実現のための具体的な目標を持つことが出来ます。
②現地のコミュニティに参加してみる
現地に知人・友人がいない孤独感が、メンタル不調に大きく影響していることがうかがえることから、現地のコミュニティに参加したり現地の友人をつくったりすることで、メンタル不調が軽減される人もいます。
ベトナムには全国に多数の日本人コミュニティがありベトナムで友人を作ることもできます。
▼気になる方はこちらの記事で詳しく解説していますので、ご覧ください。
③ストレスとうまく付き合う
「メンタルの不調の原因は何なのか」を紙に書き出し、解決できることであれば解決方法も一緒に書き出すことで思考が整理されスッキリとした気分になります。
解決しにくいことは家族や友人に発信すると、悩みを抱え込みにくく、新たな解決の視点が得られることもあるでしょう。
また、マッサージやネイルなどベトナムでも身近に出来るセルフケアを楽しむなどストレスを発散していくことも大切です。
このように、悩みを整理し一人で考え込みすぎないようにすることで、ストレスとうまく付き合っていくのがおすすめです。
※参考:駐妻キャリアnet調べ
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ベトナムは比較的治安もよく、親切で優しい人が多い印象です。生活環境では日本製品が手に入りやすく、日本食レストランが充実していることから暮らしやすいと感じ、ベトナムでは落ち着いて暮らすことができています。
海外在住では新しいことに挑戦できる環境に必然的に身を置くことになり、生活や環境を受け入れるまでは悩むこともあるかもしれません。
しかし、乗り越えていくことで新しい自分の一面の発見や成長を感じられるはずです。
焦りや不安を感じる場合は、まずは「家族をサポートしていること」「異文化の中で生活していること」を肯定して自分を労わるようにしましょう。
まとめ
労働許可証の取得から家族の帯同に関することについて解説しました。
日本人向けの求人を出す多くの企業で申請手続きをサポートするなど福利厚生が充実しており安心です。
また、ベトナムに家族と住むことで経済面や教育面でのメリットが大きくなったという方が多く、帯同者のメリットもあります。
この記事が、ベトナムでの就労や生活に役立ちましたら幸いです。
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