これからベトナムに渡り、仕事をされる方に現地生活15年の筆者からアドバイス!
駐在日本人が住みやすい国、8年連続トップ10のベトナム
ドイツの調査会社インターネーションズが発表した、駐在員が住みやすい・働きやすい海外居住地のランキング「エクスパット・インサイダー」2022年版によると、ベトナムは52か国・地域中7位、8年連続でトップ10入りを果たしました。
治安も比較的よく、物価も安い、ベトナム料理はおいしく食べやすい。ベトナム駐在経験者は帰国後もう一度ベトナムに戻りたいと思う人がいるほど、ベトナムが合う人には住み心地がいい場所です。
ベトナムに渡航される前に5つのアドバイス
この記事を読まれている方は、おそらくベトナムに何らかの関心がある方、又はこれからベトナムで新生活をスタートしようという方かも知れません。新しい土地での生活に期待で胸を膨らませているのではないでしょうか。
渡越される前に少しだけ心構えをしておくと、過度な期待による現地生活の理想と現実とのギャップによる落胆やストレスも少なく、すんなりとベトナムでの新生活に入る事ができると思います。
アドバイス① 日本と比べない!ベトナムという国、ベトナム人を理解し、受け入れる
生まれ育った背景も、言葉も、国民性も全く異なるベトナム。違っていて当たり前。常に日本を基準にしてベトナム生活を送っていると自分が苦しくなります。日本との比較をやめてベトナムという国、ベトナム人を受け入れましょう。すると気持ちが楽になり、ベトナムの生活に馴染みやすくなるでしょう。
筆者がベトナム南部ホーチミンに住み始めたばかりの2007年、バイクだらけの道は排気ガスとゴミに溢れて歩きにく、日系のお店がまだ少なかったため、欲しい物を手に入れるのも一苦労でした。
今ではほとんど現地で調達可能ですが、当時は日本に一時帰国するたびに大量の食材、衣類、100均の製品を段ボールに詰めていました。
渡越したばかりの頃は、頻繁に起こる停電、、分からない言葉と本当に生活は不便で、常にベトナム生活の不便さを愚痴っていました。知らず知らずの内に、ベトナム生活の中に日本を求め、日本と比較しては悲観的になり、自分自身を苦しめていました。
皆さんはありのままのベトナムを受け入れ、不便な生活も自分なりに工夫しながら、生活の中に小さな楽しみを見つけながら充実したものに変えてみてください。
アドバイス② 日越の懸け橋として仕事を楽しむ!
会社の中での日本人担当の役割は、ベトナム人スタッフと日本人との懸け橋役です!骨が折れる仕事ですが、やりがいは大きいです。
筆者の場合は現地企業勤務でしたが、たとえあなたが日系企業で働いても、実際に実務をこなし日々の課題を解決してくれるのはベトナム人スタッフの人達です。日本の本社、日本人の客先と社内のベトナム人スタッフのコミュニケーションを手助けするのがあなたの役目です。
日本語ができることは勿論ですが、日本人的な仕事の進め方、考え方、文化の違いを理解しているあなたが、ベトナム人スタッフとの間に立ってスムーズにやり取りができるようサポートします。
これは大変な仕事で、注意するポイントをいくつか挙げてみたいと思います。
- 日本語ができるベトナム人スタッフの日本語力を過信しすぎない。都度双方の認識が合っているか、擦り合わせをしながら進めていくことが必要。
- 日本スタイルを押し付けるのではなく、どういうものなのか、何が求められているのかを分かりやすく説明し、まずは理解をしてもらった上で仕事を進めていく。
- ベトナム人は時間にルーズなところがあります。また、ベトナムでは交通渋滞があるため約束の時間に遅れることは多々あります。日系企業を訪問するベトナム人スタッフには遅刻をしないように時間に余裕を持って行動すること、また遅刻しそうな時は一報を入れるマナーを教えてあげた方がいいです。
- ベトナム人には報連相の習慣がありません。任せた仕事はしっかり進捗を確認しながら進める必要があります。
- 人間誰でも失敗することはあります。ベトナム人スタッフがミスをした時は、人前で注意したり叱らず、個人的に呼び出して注意したほうがプライドを傷つけることなく、いい関係も保てます。
筆者は営業担当でしたが、実際はマーケティングやカスタマーサービスの仕事もこなしました。他部署のスタッフに頼まれて日本語をチェックしたり、翻訳をしたり、カスタマーサービスから頼まれて日本のお客様とベトナム人スタッフの間に立って、打ち合わせをしたり問題解決をしたりとマルチに仕事をこなしました。
私のように現地で働く日本人は、配属部署関係なく色んな仕事を任される可能性は高いでしょう。
アドバイス③ ベトナム語を少し学んでみる
たとえ簡単な挨拶「Xin Chào(シンチャオ)」でも、乾杯の掛け声「1,2,3(モッ、ハイ、バー)ヨー!!」だけでも少しベトナム語ができると、ぐんと同僚との距離が縮まります!多くの駐在日本人が口を揃えてベトナム語は習得が難しいと挫折してしまいますが、少し会話ができるようになると現地生活が楽しくなります。
外国人がベトナム語を話すとベトナム人には発音が可愛いらしく聞こえるらしく、「上手だね~」と子供を褒めるようにつたないベトナム語を褒めてくれるのです。お世辞とは分かっているのですが、少し嬉しくなります。
現地で15年も生活していると、ベトナム語にも慣れ、会話の内容が分かるようになり、少し話せるようになりました。言葉が少しできるようになると世界が変わります。
同僚の中には日本語や英語が話せる人もいますが、職場では会話が盛り上がってくると、次第にベトナム語での会話となり、自分だけ取り残されて孤独感を感じることもあります。孤立しないためにも、少しベトナム語を覚え、自分から声掛けして会話のきっかけを作るのもスタッフとの距離を縮めるコツです。
余談ですが、筆者がいつも日本人担当として心がけていた気遣いがあります。それは営業で外部からベトナム人スタッフが日本人に同行して商談に来る時、商談で何語を使って話すかは常に気を遣っていました。
日本語が得意でないベトナム人スタッフが同席する場合、日本人同士が日本語でずっと話し続けると、ベトナム人スタッフは内容が分からず疎外感を感じるでしょう。話し相手になれるベトナム人スタッフをこちら側もつけてあげる、もしくは共通で話せる英語を商談の言語に使うなどしていました。小さな気遣いです。
アドバイス④ 自ら歩み寄ってみる
ベトナム人の人は家族や人のつながりを大切にしています。ベトナム人は会社や同僚も1つの家族として見る傾向があるので、一度打ち解けると仲良くなることができます。大切なのはあなたが話したいという気持ちです!
職場のベトナム人スタッフもあなたがどのような人なのかが分かるまで、少し距離感を置いているかも知れません。ベトナム語や英語ができなくても、話しかけられるのをただ待つのではなく、自分からジェスチャーを交えながらでも話しかけてみましょう。
「何を食べてるの?」「〇〇はベトナム語で何て言うの?」「あなたは何人兄弟?」「田舎はどこ?」など。自分に興味を持って話しかけてもらえると、嬉しそうに話してくれるでしょう。
ベトナム人の同僚とある程度打ち解けて、家族構成などが分かるようになれば、時々家族のことを話題にして話してみる、結婚式に参加する、出産したスタッフに小さなプレゼントをあげるなど、小さな気遣いも距離を縮めるコツです。
筆者は部下や仲のいいスタッフの誕生日を覚えておき、誕生日には小さいプレゼントをあげていました。またベトナムは旧正月を祝うので、旧正月明けには部下にお年玉をあげていました。
アドバイス⑤ ベトナムの仕事スタイルの違いを知っておく
ベトナムと日本の職場は全く異なるので、驚きの連続だと思います。現地企業で約10年働きましたが、入社当初は色んなことに驚きました。実際に遭遇した時に心の余裕を持てるよう、よくある事例を紹介します。きっと働き始めたらどれも遭遇することでしょう。
時間にルーズなところがある
先ほども少し話ましたが、ベトナム人は基本的に時間にルーズです。極端な例を挙げると結婚式が19時開始の場合、どうせみんな時間通り来ないからとみんなわざと遅れて来場するくらいです。
筆者の会社では8時が始業時間でしたが、出社後にすぐにデスクについて仕事に取り掛かる準備をするのは日本人ですが、ベトナム人スタッフは雑談しながらゆっくりと朝食を取り始め、仕事に取り掛かるのは8時半ぐらいからでした。未だに始業時間が8時なのか8時半なのか定かではありませんが、最初はカルチャーショックでした。
日本人もベトナムに住み始めてしばらく経つと、このベトナムスタイルに慣れてしまって、少々の遅刻ならいいだろうとベトナムカラーに染まりがちになりますが、客先訪問する時には渋滞時間も考慮して早めに出発してください。
食後は昼寝!
ベトナムでは幼いころから昼寝の文化があるのを知っていますか?職場でも昼食後は枕とマットを片手に会議室に昼寝をしに行く女性スタッフ、座ったまま目を閉じたり、机に突っ伏して寝る男性スタッフがいました。ベトナムの人にとって昼寝の時間は大切なようです。会社には女性専用の昼寝スペースというものがありました(笑)。時には男性スタッフの豪快ないびきにみんなで大笑いしていました。
適応力の早さ
これは筆者がいつも感心していたことです。長く企業で働いていると去っていく人、新たに入社する人を多く見てきました。日本だと入社したばかりの頃は双方気を遣って距離感がありますよね。しかしベトナムでは(筆者の会社だけかも知れませんが)違いました。
女性に多く言えるのですが、入社して数時間後、数日後にはすっかり他の同僚と打ち解けて、もう何年も前から働いているような風格さえ出てきます。おそらくベトナム人の人懐っこい性格、明るさからなのでしょうか。少し羨ましくも感じました。
イベント大好き
ベトナムの人は交流会、飲み会、パーティー、旅行などイベントが大好きです。駐在の日本人管理者の知り合いの方は、月に何度かは従業員を連れて飲み会、誕生日会などを開催されていると聞きました。これもベトナム人スタッフとの関係維持のために大切なことです。
また、日本では聞きなれないかもしれませんが、ベトナムでは「チームビルディング」というものがあります。社員旅行と研修を合わせたような旅行で、社員同士の結束を深めることが目的です。
大抵はビーチリゾートで行われるのですが、チーム対抗のゲームをしチームワークを高め、普段職場では見られないみんなの姿を見ることができます。そして夜は宴会、カラオケ、ダンス大会・・・・
旅行が終わるころにはみんなの距離が縮まり、絆が深まります。最初はこのようなイベントに驚くかも知れませんが、会社の同僚と打ち解けるいい機会かも知れません。
日本のような「ウチ」と「ソト」がない
日本では社内のスタッフは「ウチ」、社外は「ソト」で一線を引きますよね。これもベトナムの職場で驚いたことですが、ベトナム人同士で仲良くなると、たとえ相手が取引先のスタッフであっても、友達のように親しくなります。
仕事はZalo(ベトナムのモバイルメッセージアプリ)でチャットしながらやりとりをし、友達感覚で話しているのを見ると、日本との違いに驚くと同時に、どこで線引きすればいいのか戸惑いました。
最後にこれからベトナムでお仕事をされる方へ
色々と書きましたが、これからベトナムでお仕事をしようと考えられている方へ一言。何よりも健康第一です。ベトナム南部のホーチミンは年間通して温暖な気候なので、半袖一枚で過ごしやすいと思います。
12月~4月頃は乾季で湿度が低く過ごしやすく、旧正月前になると気温が下がり肌寒くなります。旧正月後は次第に気温が上昇して一番暑い季節を迎えます。そして徐々に雨が降る日が増え、5月~11月は雨季になります。昼間は日差しが強く、エアコンの効いた室内との寒暖差で体調を崩されないように気を付けてください。
そして何より、メンタルヘルス管理が一番大事です。ベトナムはまだインフラが未発達で住みにくい部分も多々あります。知らず知らずの内に日々の小さいストレスは溜まっていくものです。美味しいお店を開拓してみる、ベトナム語を習ってみる、ゴルフを始めてみるなど、小さくてもいいので何か楽しみを見つけて、うまく息抜きしながらベトナム生活を楽しんでみてください。皆さんのベトナム生活が実り多きものになりますように応援しています!